データ分析もChatGPTに“お願い”するだけ!?未来のアクセス解析について我々が考えること(後編)

データ分析もChatGPTに“お願い”するだけ!?未来のアクセス解析について我々が考えること(後編)

最近話題のChatGPTを使い、アクセス解析をしてみた結果と、課題について前編で触れました。
▼データ分析もChatGPTに“お願い”するだけ!?未来のアクセス解析について我々が考えること(前編)
https://qazero.qa-kensyo.com/blog/chatgpt-and-qazero-01/

後編では、我々が考えるQA ZEROで実現したい未来のアクセス解析について触れます。

未来のアクセス解析:Excelもかわる!?

最近ExcelにもCopilotが搭載されるという話が出てきました。

こうなると未来感がすごいですよね。

しかし、Excelもまた、前編で触れたChatGPTと同様に解決できない問題があると想定しています。
今日はこの点を深掘りします。

ChatGPTやExcelがあと100年たっても解消できない課題

前編でChatGPTによるアクセス解析には、下記の課題があると書きました。

  • 物理的な課題
  • UX上の課題

データツールを作っている立場からすると、あと100年たっても解消できない課題です。
というのも、これは”欠損”の話だからです。

欠損とは、たとえば「ChatGPT”だけ”では100年たってもラーメンを作れない」という問題です。

解決するには「ロボットアーム」など、何らかの欠損を補う追加のシステムが必要になります。

ChatGPTで行うWebアクセス解析に欠損しているもの

では欠損しているものは具体的に何か?というと、下記3つになります。

  1. ページ内のユーザー行動データ
  2. 大量のデータを高速かつセキュアに処理する仕組み
  3. チャットしかない(=入力に悩む)

1.ページ内のユーザー行動データの欠損

1番は厳密にはアクセス解析ツール側(主にGA4)の問題になります。

GA4を含む多くのアクセス解析ツールは定点イベントを記録するツールで、ページ内のユーザー行動を一定間隔で記録し続けるツールではありません。これが欠損を生みます。ユーザー行動の一定間隔の記録とは、録画のようなデータのことです。

あまり良いたとえではありませんが、、
たとえばコンビニ店内で万引き犯を特定するとして、この場合、定点観測データより、監視カメラの映像を使わないと難しいです。

このように、次のユーザー行動を詳細に予測する場合「録画」の方がはるかに有意義で、逆にいうとこのデータが存在しないとAIを使っても高度な推測は不可能になります。ですから、QA ZEROはプライバシーに配慮しながら全データを録画し、将来のデータ欠損を防ぎます。

余談ですが、Microsoft Clarityの人工知能であるCopilotがチャレンジしているのがこの分野です。
しかし、そのCopilotも、今のままだと残念ながら別の欠損の課題を抱えていると考えています。これは、この後の「アクセス解析特有の課題を解決する特許」で触れます。

2.大量のデータを高速かつセキュアに集計する仕組みの欠損

もともとChatGPTに予測不可の大量のデータを渡して計算させることはできません。
無限のデータに対して集計させることは、無限が故、数学的に発散してしまい、ChatGPT側にどれだけコンピュートリソースがあっても足りないからです。

新しい分析機能「Code Interpreter」が大量のデータを処理できるらしい?

ChatGPTに、100MBまでのファイルをアップロードしてデータ分析できる「Code Interpreter」という新機能が実装されたことを知っている人は、いつか欠点がなくなると考えるかも知れません。

そこで試しに公開されている兵庫県の法人データベース(40MB程度)をアップロードして「どの地域の法人が多いでしょうか?」と聞きました。

結果は「負荷が高いから後でね」エラーです。特に日本語2バイトの文字列マッチングを手探りで試すというのはアルゴリズム、CPU、メモリ問題として物理的にきつい、つまりChatGPTにとっては時間とお金がかかるため、無料でやる意味がまったくない分野になります。かつデータも渡してしまったら全くセキュアではありません。

解決策

これに対応する方法は、無限のデータではなく有限のデータであることをChatGPTに教えた上で、ChatGPTに有用なサマリーデータを送ることです。

つまり「人間 ⇔ ChatGPT ⇔ QA ZERO」というコミュニケーションを上手に成立させる必要があり、大量のデータ処理はQA ZERO側で行うことが確定しますので、QA ZERO側で高速データ処理の仕組みを有する必要があります。

この高速処理のため、QA ZEROは独自で作ったデータベースクラスにデータを格納しており、これは、最近高パフォーマンスで再注目されているSQLiteのような仕組みです。このあたりはまた別の機会に記事にしたいと思います。

3. チャットしかない(=入力に悩む)

現状ChatGPTはチャット以外のユーザーインターフェースを持ちません。
従ってチャットだけを使って有意義なデータ分析結果を出す必要があります。

ところが、ChatGPTはオープンクエスチョン方式ですので、仮説がない場合に何を入力してよいのか悩んでしまいます。

これ、よく言われている「仮説がないとデータ分析は難しい」と同様の問題であり、そもそも自分に仮説がないと解決ができません

この欠損を補うためには、1,2を解決した上で、何を入力すべきか自然に操作できるような優れたユーザーインターフェースが必要です。

QA ZEROはどうするの?

我々はAIを用いたアクセス解析に可能性を感じています。

よいニュースとして、QA ZEROは全録ツールですので、欠損1がありません。かつ欠損2についても高速でデータを処理する仕組みは既に有しています。

残るは2の人間⇔ChatGPT⇔QA ZEROの3者間コミュニケーション部分、そして3のユーザーインターフェースの課題となります。

人間⇔ChatGPT⇔QA ZEROの3者間コミュニケーション

ここは、わかりづらいので最初に少し補足します。

コロンブスの卵的な衝撃だったのですが、私はChatGPTに人格のようなものを感じています。

イメージでいうと、汎用的にものすごく物知りで、人だろうがコンピューターだろうが相手にあわせることができる人。声はナイト2000です笑。

Wikipediaより

さて、アクセス解析では、ユーザーが期待する情報とツールが表示できる情報とのギャップが大きすぎ、それがわかりづらさを生んでいます。これを解決するには、適切なコミュニケーション設計が必要で、今までは画面で工夫するしかありませんでした。

これが、ChatGPTの登場により、UI/UXを大きく変化させることができます。人間⇔QA ZEROだけでは解決できなかった大きな情報のギャップをChatGPTが吸収してくれるイメージです。ここを適切に設計できると、今までにないアクセス解析ソフトウェアができあがります。

アクセス解析特有の課題を解決する特許

さてMicrosoft ClarityのCopilotは、自動でセッションリプレイの内容をラベリングし動画の説明をしてくれますが、これはまさにそのAIの力強さを感じます。しかし、英語っぽいUIだからか、まだなんとなくわかりづらいんですよね。

その理由はUIもそうですが、まだユーザーの期待値とのギャップが大きいこと。そして、Clarity側ではデータにこれ以上の重み付け/意味づけができないことです。

重み付け/意味づけは結構大切で、そもそもECなのかBtoBなのかというサイトの質と、滞在しているページによって、同じように見える行動の意味づけがかわってくるというものです。これはアクセス解析特有の情報の欠損であるため、ChatGPTが自動では判断できない問題です。

これを解決するためには、サイトのタイプや目的などについて、人間側の適切なフィードバックをChatGPTに返すことが効果的です。そうするとChatGPTの叡智をもっと引き出せます。

このアクセス解析データに対して人間のフィードバックを適切に返すことで、アクセス解析専用の賢いAIに育ててしまおうというのが、弊社保有の特許(特許第7011367号)になります。

ユーザーインターフェースの課題

ゲームやAppleに見られる優れたユーザーインターフェース

我々はビジネスソフトウェアを作っていますが、どちらかというとゲームソフトやAppleの考え方を尊敬しています。

▼ユーザーインターフェイスのデザインのヒント -Apple
https://developer.apple.com/jp/design/tips/

当然ChatGPTを用いたアクセス解析はまだ未知のものですが、ゲームには既に多くのヒントがあります。
「何を入力したらよいのかわからない」という課題は、このようなユーザーインターフェースの先人に習うことで解決できると考えています。

いつぐらいに実装するのか?

「いつQA ZEROにchatGPTが実装されるの?」ですが、早めにやりたいとしか言いようがありません。
少なくともプロトタイプを作って操作してみないことには、実際に「欠損の壁」を越えられたか判断がつかないですからね。よいAIの画面イメージができたら早めに公開します。

みんながんばれ
じゅもんをせつやく
ガンガンいこうぜ
いのちをだいじに
いろいろやろうぜ
じゅもんをつかうな

余談:さらに未来のアクセス解析について

最後に余談ですが、さらに未来を見据えて。

  1. AIによりアクセス解析は完全に自動化し消滅すると思うか?
  2. QA ZEROは何処を目指すのか?

1. AIによりアクセス解析は完全に自動化し消滅すると思うか?

半分イエス、半分ノーです。

イエスの理由は、おそらく人間の本能的な反応は、AIに必要な行動データが揃えばほぼ言い当てられてしまい、なんだったら自動でクリエイティブを作ってサイト改善テストもやってしまうだろうと想定しているからです。こうなると人間は必要ありません。かつウェブサイトの役割も今後変わっていくと予想していますので、ますますイエスです。

それでも半分ノーの理由は、人は人に興味があり、本能だけで行動しないし、投資家ジョージ・ソロスの言う再帰性も絡み、未来は不確実だからです。

ここを掘り下げるのは今回のテーマではないですが、ジョージ・ソロスの言うように機械任せで100%勝つ株式投資はそもそも存在できないと同じような理由で、完璧に自動化するアクセス解析ソフトウェアは論理的に不可能だと考えます。

2. QA ZEROは何処を目指しているのか?

QA ZEROは、人とAIの可能性を両方信じており、半分イエスと半分ノーの両方を追求したいと考えています。

自動化できる部分はAIに任せ、かつ人のポテンシャル発揮をサポートする、楽しいツールでありたいと思っています。

QAのポリシーは「すべての人にデータに基づくインスピレーションを」であり、その実現にはChatGPTのようなAIの存在が欠かせません。生成AIをうまく使えば、よりインスピレーションにつながる発展も可能です。

そんな夢のような話を目指して、まずは一歩ずつですが、将来困らないように「将来必要なデータを貯めておく」ところから。

一緒に夢見ようぜ!とのってくれる方は、ぜひQA ZEROを使ってみてフィードバックをお願いします。