丸山です
こんにちは。
WordCamp Asia 2024 in Taipeiに参加してきました。
今回、私には3つのテーマがありました。
- 海外のCookie事情について最新情報を得る
- 海外のアナリティクスの利用状況について複数人にインタビューする
- WordPressの未来を知る
実際に参加してみて、これら3つのテーマが「時代が変わる」というテーマで偶然にも重なったところがあると感じています。
そこで、私なりのレポートとして、その時代を変える一つの理由である「データの変化」に焦点を当てて、少し真面目にWordCamp Asia 2024を振り返りたいと思います。
こんな人たちに聞いてきました
アンケート地域
実際に13人の外国人にインタビューしました。
イメージがつきやすいように地図上に表示してみましたが、さすがAsiaという感じです。同じ地域で被った方や、地図に表示できなかったアメリカの方も含まれます。
職業
デザイナー | 2 |
マーケッター | 2 |
開発者 | 4 |
サーバーエンジニア/CTO | 4 |
その他 | 1 |
使っているアクセス解析ツール
Cookie同意バナーを設置するとGA4のデータが減るのって知ってる?
以下のように、GA4のCookie検証結果の値を見てもらって海外ユーザーの声を聞きました。
「GA4はデータが減る」と誰も知らない。海外ユーザーの声
みんなGA4は使っています。ところが、弊社の検証結果をみせてヒアリングすると。
- 「こんなにデータ数が減るの?でも仕組みの違いでしょ?」
- 「え?ユーザーがCookie拒否したら、GA4はデータを取らないの?」
- 「あ、GDPRのポリシーのせいか!理解した。それは早く皆に教えた方がいいよ。」
これは盲点でした。私は海外の人はみんな知っていると思っていたからです。
なぜ誰もGA4のCookie問題に気づかず、騒がれなかったのか?
私もインタビューをしていて、だんだん事情がわかってきました。想像も入りますが下にイメージ図を書きます。
つまり、みんなGA4の仕組みの違いで減ったと思っているか、まだ知らないのです。
実際にYouTubeで下記の動画を発見しました。この中で、Cookieで3割〜5割以上は減るよって説明されていますが、みんな原因がわからないので「Why missing data ?」と検索するっぽいです。
これはちょっと驚きの反応でしたね。やっぱり聞いてみるといろんなことがわかります。
その他まとめ
- 欧米の人(特に欧州)はCookie規制ですごく困っている。
- アジアは全体的に緩く、日本と似た感覚。
- イギリス領だった香港は別で、2019年ごろからCookieバナーをつける注意喚起が出回っていた
- インドネシアは2025年からCookie規制の準備をしなければいけない
- 一部マーケッターはGoogle アナリティクスを使うけど、一般人はほぼ見ない
あと、オーストラリアの弁護士であるTungさんが教えてくれた話です。
もし私がただページにアクセスしたいだけだと思えば、拒否するか受け入れるかのどちらかをクリックします。全てを受け入れるをクリックするのは、本当にそのページを見たい時で、気にしないからです。カスタマイズする必要があるときは、面倒くさくなってしまうので、ただ全てを受け入れます。
if i see it as i just want to access page, i will just click either reject or accept. If i click accept all it is because i really want to see the page and do not mind. If i have to customise i get too lazy so i just accept all.
Tungさんは弁護士なんでユーザー目線の話なのですが、そりゃ初見のサイトは拒否するし、どうしても見たかったら面倒くさいから許可するよね、と思いました。
欧米ではWeb担当者という職種が危機に!?
実は、今回の台北に行く前に、とあるグローバル企業の方から「欧米圏ではCRM偏重で、一般的なウェブ担当者の仕事の価値が危うい」というお話を聞いていました。
今回、海外のイベントに参加して、その経緯に納得しています。
- GoogleやMicrosoftなどのビッグテックは、すごい速度で欧米のプライバシーに対応していく
- その結果、Chrome、GA4、Cralityといったソフトウェアの仕様変更はほぼ確定路線である
- 欧米ではとにかく法律に従う姿勢で、全体的に諦めムード。同意がとれた人が中心のCRM系に偏重していく
- 一方アジア圏の人達はまったく違うのんびりムード
- しかし「インドネシア人はプライバシー気にしないのに!」と言っていたインドネシアで来年からCookie規制が始まるように、この流れは止められない。
Cookie規制によるアクセス減少&CV減少&CPA悪化の3つに備える
私たちWebサイトを運営する立場としては、Cookie規制により、下記3つが発生することを予見し、なるべく止めなくてはいけません。
- アクセス数減少
- CV数減少
- CPA悪化
これらはWeb担当者の主要業務の一つ「潜在顧客の開拓」に関することですが、オーストラリアのTungの言葉を聞けば、初見ユーザーが拒否する=データがなくなるわけで、プライバシー問題の煽りをうけるのは必然ともいえます。
しかし上記の悪化は、そのまま多くのWeb担当者の職務の危機になりますので、なんらかのリスクヘッジを行うべきだと考えます。
Web担当者の職を守るデータ資産ポートフォリオ
データは資産だと捉えた時、ポートフォリオという考え方が流用できます。
Web担当者や運営に関わる人にとっては、会社のデータ資産の配分と、自分の学習時間をどこに投資するか?という考え方を示したもので、図示したのがこちらです。
特に右型のStock型の資産が減少するとダメージが大きいです。
バランスのよい資産配分
将来の様々なリスクに対応するならば、低リスクの資産にうまく分散させるとバランスが良くなります。
自分がどこの知識を伸ばすのか?という問題にも深く関わってきます。
欧米は既に手遅れ。でも日本はまだ間に合う
そのグローバル企業の方から聞いたのですが、欧米企業の予算はCRM系に偏重し、既に手遅れだということです。
確かに今回インタビューしてわかったように、欧米はCookieバナー導入後にGA4に変化して、データが減少したため、運営側としてよいことがなく、そもそもCookie問題だとわかっている人も少数です。
「Googleももう駄目だし、できることをやるしかない」となり、もう把握することのできないWebサイト全体の分析を諦めていく事情もわかります。
しかし、日本はまだ間に合います。諦めムードになったら縮小ムードになってしまいますし、そうならないように、このデータ資産ポートフォリオの考え方はお伝えしていきたいです。
Googleの3rdパーティーCookieについてのセッションから
Getting Ready for the Deprecation of 3P Cookies
2024年で全廃するChromeの3rdパーティーCookieに関するGoogle社のAlberto Medinaによるセッションを共有します。
Google Chromeが3rd party Cookie廃止に向けて、プライバシーサンドボックスを含むどのようなツール群を用意しているのか?という話です。
内容が濃かったぶん早口で、かつインド英語なので、私は翻訳ツールを使って聞いていました。YouTubeでも自動字幕がありますので、セッションを見てもらうのがおすすめです。
質疑応答
- Q.開発する側は大変なので、W3Cなど共通化団体でやってくれないか?
- A.Googleは常にオープンであり、準備はできている
- Q.どこまで政府は介入してくるのか?
- A.私は技術者なので、その質問には答えられないが、シンガポールのCSAなど各国にはセキュリティ機関があり、我々はその各国にレポートを提出し、パスしなくてはならない。技術的には非常にエキサイティングな取り組みだ。
各国におけるプライバシーの問題は、ナショナリズムの一部として保護主義政策の面も帯びながら急拡大している印象をうけました。これはジェンダー問題のように世界的トレンドになるのだろうな、という印象です。
プライバシーサンドボックスをチェックできるChrome拡張機能
プライバシーサンドボックスには「PAST」という分析ツール(Chrome拡張機能)が提供されています。
まだ米国で6000ユーザーくらいしか使われていないようなので、気になる方は使ってみるとよいですね。
使ってみた結果はこんな感じで表示されます。
デベロッパーツールでどんな通信が行えるか確認できます
(余談)GoogleはSaaS型のトラッキングをブロックする方向へ
今回の参加で調査する中で驚いたのですが、GoogleChromeには下記の提言がなされています。
▼IP-protection
https://github.com/GoogleChrome/ip-protection
これはNGドメインリストに掲載されているドメインをブロックしてしまおうという考え方で、Braveなどが採用しているトラッキングブロックと考え方と同じです。しかもIPアドレスをマスクするという高レベルの提案で、これをやられてしまうと、SaaS型のアクセス解析は全滅してしまいますし、下手をするとMAツールや接客ツールなども駄目です。
私は正直、Googleは自分のクビをしめるので、このレベルのプロテクションはやらないと思っていました。
それだけ欧米のプライバシーの圧力が相当強いということだと思いますし、この流れが世界に波及すると読んでの、Googleの覚悟(Googleは自社サービスだけで勝負する)のあらわれだと感じています。
まとめ
文中にも書きましたが、事前にグローバル企業の方から厳しい事情をお聞きし、Cookieについてお伝えする使命感みたいなものをもってのぞんだところもあり、勇気を出したことで、いろいろ肌感覚でわかったのはとても良かったと思いますし、この内容はぜひ共有していきたいです。
実際は、つたない英語力のため「ちょっと何言っているかわかんないっす」と思いながらの、汗かきながらの体当たりインタビューだったのですが、皆さんとても親切に教えてくれました。感謝です。
「QA Analyticsを売ってくれない?」
実は、インタビューの中で、Automattic社(WordPressの創設者Mattの会社)の人から、「こりゃすごいね。個人的にこのソフト事業を売ってくれないw?(冗談っぽく)」と言われました。
確かに弊社調査でも、この問題を手軽に解決できるのは、現状QA Analyticsくらいだと思います。ですので欧米圏が諦めムードになった理由は「解決策がなかったから」だとも思います。
そういう意味でも、私としては、世界のウェブ担当者の人に「自社サーバー上の計測が最後の砦になる」ことをお伝えしていきたいですし、その分野で一番使いやすいソフトウェアを作っていきたいと思っています。
※補足
QA AnalyticsはWordPressのプラグインであり、WordPressユーザーであれば無料で使えます。
QA ZEROは全サイト・大規模トラフィックに対応した法人向けソフトウェアで、有償のご提供です。
次回 参加記録その2「未来のWordPress編」
以上でWordCamp Asia 2024参加記録その1「海外のアナリティクス編」を終わります。
次回はWordPressの未来について見聞きしたこと、感じたことをもう少しさらっと書きたいと思います。